ホースウェルネスプログラム〜人・馬・自然が響き合う、再生のフィールドづくり〜
Embodied Transformation
身体性 社会変容

2022年から2023年にかけて、私たちはうまJAMのプロジェクトメンバーとして、静岡県富士宮のNPO法人EPOのフィールドを拠点に、「ホースウェルネスプログラム」の実践に取り組んできました。
このプログラムは、単なる体験型アクティビティではなく、人・馬・自然が調和し、共鳴しあうことで生まれる“場”そのものを育てていく試みでした。
はじまり:
調和共鳴というコンセプト
最初の開催は2022年6月。森林療法の実践者の方々を迎え、体験会としてスタートしました。私たちが大切にしていたのは、「人間のためのプログラム」に留まらないこと。
・馬にとっても無理がないこと
・自然環境との関係性が損なわれないこと
・そこにいるすべての存在にとって心地よいこと
そうした配慮の中で、すべての生命に開かれたウェルビーイングの場を目指しました。その結果として現れたのは、外側の交流だけでなく、内側の静かな気づきが広がっていく時間でした。

プログラムの深化:
異なる知恵の統合
この取り組みは、さまざまな領域の実践が交差することで、少しずつ深まっていきました。
・森林療法
・ソマティックワーク(身体志向のアプローチ)
・トラウマヒーリングの知見
・ボディワーク(クラニオセイクラルなど)
・地域福祉の現場で培われた関係性
それぞれが独立した技術としてではなく、「場の質」を高めるための知恵として統合されていったのが特徴です。完璧なプログラムを目指すのではなく、その場の流れと参加者、そして馬たちの状態を感じながら、共に創っていくプロセスそのものが重要視されました。

馬という存在がもたらすもの
馬と共に過ごす時間の中で、多くの参加者が共通して語ったのは、「理由を超えた安心感」でした。大きく、あたたかく、規則的に呼吸する存在に触れるとき、人の身体は自然と緩み、感覚がひらかれていきます。そこでは、
・呼吸が深くなる
・身体の緊張がほどける
・思考が静まる
・感情が自然に流れ出す
といった変化が、無理なく起こっていきました。ある参加者は、「まるで赤ちゃんの頃に戻ったようだった」と表現しました。それは、何かを“する”ことで得られるものではなく、ただ共に“在る”ことから生まれる体験でした。

共鳴する場:
人と人、社会へ
このプログラムのもう一つの特徴は、個人の癒しを超えて、関係性や社会へと広がる視点にあります。トラウマヒーリングの文脈では、人が回復していくためには「リソース(安心・愛・平和など)」とのつながりが不可欠だとされます。馬や自然との時間は、まさにそのリソースを育むものであり、それは個人にとどまらず、
・他者との関係性
・コミュニティの在り方
・社会全体のありよう
にも影響していく可能性を感じさせるものでした。実際に、学生や福祉関係者の体験では、「人との関わり方」や「働き方」「生き方」そのものへの気づきが数多く共有されました。

フィールドとしての完成度へ
2023年には、リトリート形式へと発展。ゆっくりと時間をかけて安心の場が立ち上がる中で、参加者はより深く自分自身とつながり、その繊細さを保ったまま馬たちと関わっていきました。特に印象的だったのは、場が深く調和したとき、馬たちのほうから人に近づいてくるという現象です。それはコントロールや訓練では生まれない、関係性そのものの質が引き起こす出来事でした。夜の暗闇の中で感覚をひらき、音や振動、自然のリズムと共鳴する体験も含め、このプログラムは単なる体験を超えた「場の芸術」とも言える領域へと近づいていきました。
私たちが見ている未来
この実践を通して見えてきたのは、現代社会が抱える分断やストレスに対する一つの可能性です。測定可能なものだけに価値を置くのではなく、自然や生命が本来持っている知性と再びつながること。そして、人・動物・自然が対等な関係性の中で互いに影響しあい、支えあうこと。それは特別なことではなく、かつて人が知っていた在り方を、もう一度思い出していくプロセスなのかもしれません。
終わりに
このプログラムは、関わってくださったすべての人、そして馬たちと自然の存在によって育まれてきました。ここで生まれた安心と穏やかさの波紋が、それぞれの日常へと持ち帰られ、さらに広がっていくことを願っています。

ホースセラピーブック
また、このプロジェクトは、関わってくださった多くの方々の尽力と協働の中で一つのかたちへと結実し、ホースセラピーに関する書籍としてまとめられる運びとなりました。現場で育まれてきた実践や知見が丁寧に編まれたこのサポートブックに、代表・大野もPart 6への寄稿というかたちで関わらせていただいています。こうした取り組みが記録として残り、さらに次の実践や対話へとひらかれていくことを、心から嬉しく思います。
https://www.umajam.com/pages/35/
